仕事場で全く仕事をせず,報酬だけもらっている人はいませんか?学校であれば,クラスの仕事をやらない人いませんでしたか?サークルの運営を丸投げする人はいませんでしたか?こんな人たちを見ていると,自分が一生懸命仕事や運営をしていることがまるで馬鹿馬鹿しく思えてきます。これは一種の集合行為問題が働いていると考えられます。
集合行為問題とは何なのでしょうか。具体例を交え解説します。また集合行為問題の解決方法についても考えてみましょう。
集合行為問題とは
集合行為問題とは端的に述べると,自分は協力する意思があるが,他者が協力する意思があるか分からないから,結局集団として協力することができないことを指します。2つの例を見てみましょう。
まず共有地の悲劇というもの。ある森の資源は共有の持ち物として,AさんからEさんで分けることとなっていました。しかしAさんは思います。「最近Cさんが夜な夜な森に出かけている。まさか資源を1人で独占しようとしているのでは。というかBもDもEも独占しようとしているかもしれない。」と。こう思ったAさんはどうするでしょうか。他者に資源を独占される前に全部自分がゲットしよう,と思うでしょう。これが共有地の悲劇です。
二つ目にフリーライダー問題を紹介します。NHKの受信料は度々話題に上がりますが,受信料を払わない人が時たまいます。しかし,現在のシステム上テレビがあればどこでもNHKは見れます。だから受信料を払っていない人であっても,NHKを見ることができ,タダ乗りすることが出来るのです。
冒頭の会社や学校,サークルの例はこのフリーライダーが発生しているのです。
集合行為問題はいつ起こる?
集合行為問題が起こる条件として二つ挙げられます。それは非排除性と非競合性です。どちらかでも満たすと集合行為問題が起こる可能性が出てきます。
非排除性
非排除性とは,対価を支払わない人を排除するのが難しいということです。
NHKで言うと,支払っていない人だけ電波を止めるなどが難しい(技術的には十分可能でしょうが)ということです。サークルの運営で言うと,運営をサボっている人をサークルに来てはダメです,と排除することが難しいと言うことです。
共有地の森なら「怪しい人を追放したらいいんじゃないの?」と思うかもしれませんが,それは5人という少人数で共有しているから思うだけです。1000人,1万人で共有する資源,例えば海の魚などはどうでしょうか。乱獲している人を排除することは現実的には難しいのです。
非競合性
非競合性とは,誰かがその財を消費しても他者が消費できる量が減らないことです。
NHKの他,公園や警察,消防,救急などです。これらの財は使ったらなくなることはないので非競合性があるのです。
以上のことをまとめると下の表のようになります。
排除性 | 非排除性 | |
競合性 | 私財 | 準公共財(共有財) |
非競合性 | 準公共財(クラブ財) | 公共財(純粋公共財) |
私財は一般的な財です。共有財は森林や水資源。クラブ財は電気水道,ネットフリックスなど。純粋公共財は公園や警察,消防などです。
集合行為問題の解決方法
集合行為問題の解決方法は大きく分けて2つあります。
少人数グループにする
協力する集団をできるだけ小さくします。そうすればある程度口約束で協力関係を築くことができます。
でも現実問題として,少人数にするのは限界があります。そこで二つ目の方法です。
第三者による監視,報酬,制裁
どことなく仰々しい単語が並んでいます。つまり監視して,協力していたら報酬を与え,非協力のものには制裁を加えるということです。
国家レベルだと制裁が主に使われます。税金を払っていなかったり,もっと広く犯罪を犯したら,警察により逮捕され,裁判所により制裁を与えられます。
でも学校や会社で制裁なんて行っていたらあまりに息苦しくないですか。そこで報酬です。仕事内容を共有(監視)して報酬制度を組み立てることで,集合行為問題を減らすことが出来るのです。
おまけ
サークルから学校,国家レベルまで,基本的に監視,報酬,制裁で秩序を保っています。
しかし,それより大きい国際レベルだとこの3つが働きません。中国がいくら魚を乱獲していようと日本の警察は逮捕することは出来ません。解決するには外交を通して交渉したり,何らかの枠組みに入れたりする,もしくは戦争して勝つ他ありません。
このように国際レベルでは,国内とは異なり絶対的な権力が存在しない(アナーキー)ので集合行為問題の解決がより難しくなります。
このようなことを研究する学問が国際関係論です。興味があれば調べてみてください。
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